私たちのこと

私たち Emell Eme Emess (エメル・エメ・エメス) は、主に本物の蝶の翅を用い、時計やアクセサリを一点ずつ手作りしています。
Emell Eme Emss は作家かみじまなやとアシスタントまよいで運営しているショップ名です。

標本として役目を終えた蝶や、傷や欠けを持つ個体を再び活かすこと。それが私たちの制作の出発点です。

その傷もまた、生きた証。
いま多くの生き物が減っている時代だからこそ、まずは知ることから始めたい。

こんな存在がある世界に、私たちは生きている。その世界の厚みを、そっと示していけたらと願っています。

作家 「かみじまなや」について

モルフォ蝶の翅を用いた時計、ドール用のモルフォアイ®、各種アクセサリの制作を手掛けています。

蝶と出会ったのは、まだ幻想画家として絵筆を手にしていた頃のことでした。


フェアリーアートの参考資料として、ある一頭の標本を手に入れたのが始まりです。
その蝶の名は、オオルリオビアゲハ(Papilio blumei)——日本にはいない、青と緑の構造色をまとう美しいアゲハでした。

凛としたたたずまい、完成された曲線、細やかな鱗粉が織りなす光——その美しさに、ただ圧倒されました。 「これは、絵には描けない」。
人生で初めて、自然の造形の前で挫折を覚えた瞬間でした。
けれど、その挫折が、別の方角へと歩みを向けさせます。
描けないのなら、知りたい——そうして、蝶のコレクターとしての日々が始まりました。
その世界に長くいるうちに、一頭の標本の背後には譲り手の人生があり、行き場を失っていく翅たちがあることを、少しずつ知っていきます。
何も知らない手で、初めて翅に触れ、ひとつの作品にしようと試みた日から——もう、十数年。
主にモルフォを扱いながら、その構造色と長く向き合ってきました。
鱗粉のひとつひとつが、光をどう曲げ、どう返すのか。
その答えは、いまだ尽きません。

絵筆を一度置いた手は、長い年月のあいだに、ふたたび絵を求めはじめます。
時の流れと、人々の温かな言葉と、ふとした衝動が、手のひらに色を戻してくれたのです。
蝶を見つめているうちに、その翅を描きたくなる。
モルフォの青を、水彩でどう写しとれるかを、夜更けに試している自分がいる。
かつて描いていたフェアリーアートも、心のどこかで、もう一度羽ばたきはじめています。
蝶と絵は、別々の場所にあるはずなのに、いつのまにか、ひとつの手のひらの中で繋がりあっていました。

翅を引き取るということ

蝶の標本は、
ただ美しい姿を留めるためにあるのではありません。

その小さな個体には、
採られた季節と、国と、地方と、標高と、年月日と——
一頭が生きた世界そのものが記録されています。
同じ種の翅にあらわれる微かな変異は、
その地の気候や時代を映し、
いつか未来の誰かが過去を読み解く手がかりとなる。
標本とは、地球規模の小さな記録庫なのです。
けれど、
その記録もまた、
いつかは人の手から離れていく時が来ます。

長年、蝶と共に在った採集家のもとから、「もう続けられない」と相談が届く。
ご夫婦が永年の住まいを離れるとき、棚の奥にしまわれていた標本箱が、静かに行き場を失う。
私たちが翅を譲り受けるのは、そうした人生の節目においてです。
役目を終えた翅たちが、再び誰かの手で形を与えられる——その引き継ぎの場所に、私たちは静かに立っています。

翅を集めるとき、私たちは市場に足を運びません。
「B級品」と呼ばれる名のもとに、見渡せば完品に近い翅が含まれていることを、私たちは知っているから。
そして、本当に傷ついた翅は、その商いの場にはなかなか姿を現さないからです。
ですから私たちが扱う翅は、ただ一つの道筋からしか集まりません。
蝶と長く人生を共にしてきた誰かの、その蓄積の終わりに、そっと差し出されるもの。
急がず、待つこと。
地道に、引き継ぐこと。
それが、私たちの選んだ唯一の方法です。
私たちが手にする翅は、世界のどこかで一頭の蝶として確かに生きた、その最後の証です。
役目を終え、人の手から離れた翅たちを、ただ「素材」とは呼びたくないのです。

ひとつひとつに、誰かのまなざしと、長い時間と、惜しまれた別れがあります。
標本箱の奥で静かに眠るかわりに、誰かの腕や、首元や、手のひらで、
もう一度時を刻むこと—— それが、私たちが選んだ「記録の引き継ぎ方」です。

強化翅という技法

Emellの作品の根幹には、「強化翅」と呼ぶ独自の技法があります。
これは、蝶の繊細な翅を、その形と色のまま留めるための技術です。


蝶の翅、とりわけモルフォの翅は、驚くほど繊細です。

わずかな水分の重みで破れ、薬品に触れれば容易に変色し、熱にもまた弱い。
本来であれば、その姿のまま長く留めておくことは、たいへん難しい素材なのです。
だからこそ、翅をありのままの形で残す試みに挑んだ人は数多くいたはずですが、確
立された前例はまだ見当たりません。

Emellの強化翅は、変色や色抜け、質感の損失——
数えきれない失敗を重ねた末に、少しずつ形になってきたものです。
完成までに十年以上を費やし、今もなお改良を続けています。

この技法のおかげで、本来は素手で触れることすら難しい蝶の翅を、間近でその造形と輝きを感じていただけるようになりました。

そして、この技法が生まれたきっかけは、意外なところにありました。

絵から少し離れていた時期、私は球体関節人形を作っていました。
その人形を見つめながら、ふと思ったのです。
——この子に、いつか妖精のような翅をつけられたら、どんなに美しいだろう、と。

その小さな願いが、蝶の翅をそのまま留める方法を探す、長い道のりの出発点になりました。

強化翅とは、いわば「人形に翅を与えたい」という、ささやかな夢から始まった技法なのです。


翅を切り刻んでしまえば、加工はずっと容易になります。

それでも形をそのまま残すことにこだわるのは、その蝶が確かにこの世界を生きていた

——その証への、敬意にほかなりません。

制作工程

ひとつの作品が生まれるまでには、いくつもの工程があります。

その多くは手作業で、一点ごとに費やす時間も、向き合い方も異なります。

ここでは、翅が作品へと姿を変えていくまでの道のりをご紹介します。

・翅の選別/状態確認


まず、お預かりした翅を一枚ずつ確かめることから始まります。

傷んでボロボロになった翅も、余すことなく使います。


胴がカビていたり、潰れてしまった個体は、欠けをなるべく見せないよう工夫しながら、その形をできるだけ残して仕立てていきます。


経年によって光沢を失った翅にも、その個体だけが持つ独特の風合いがあり、大切に取り置いています。


どんな状態の翅にも、それぞれにふさわしい居場所があると考えています。

・翅の準備(強化翅の処理・成形)


先人のもとで時を過ごしてきた蝶たちは、状態の良くないものも少なくありません。

胴体がカビている個体も多いため、それを一つひとつ丁寧に取り除くところから始めます。

その後、独自の工程を経て翅を「強化翅」へと仕立て、作品に合わせて切り出し、形を整えていきます。

※この強化処理は、かみじが十年以上にわたり独自に培ってきた技法です。詳細は企業秘密とさせていただいています。


・配置/構図の決定


ここは、作品の印象を決める最も大切な工程のひとつです。

その蝶が最も美しく見えるよう、心を尽くします。

翅の露出する面積、角度によって変わる輝きの見え方、全体のバランス、パーツの量と配置——

ひとつとして同じ翅はないからこそ、一点ごとに最適な構図を探っていきます。


・接着/固定


各パーツは、できるかぎり強固に固定しています。

ただし金具部分については、あえて「ある程度以上の力が加わると外れる」構造にしています。

これは、固定をしすぎたことで全体が壊れ、修復できなくなってしまった事例が、過去に何件かあったからです。

強く留めすぎないことが、かえって作品を長く守る——その結論に、経験を通じてたどり着きました。

万一パーツが外れた場合も、修理を承っています。

・検品/梱包


完成した作品は、一点ずつ丁寧に検品します。

お客様のお手元に、安心してお迎えいただけるように。


そして最後の梱包も、作品づくりの一部だと考えています。


箱を開けた瞬間に、贈り物を受け取ったときのような小さな感動が宿るように

——そんな思いを込めてお包みしています。

年間制作可能数の有限性

一翅ずつ手で仕上げるため、年間に生まれる作品は限られています。
お届けまでお時間をいただくこと、また次の入荷までお待ちいただくことがあります。
予めご了承くださいませ。

お迎え後のサポート — 永く愛していただくための約束

時計をお買い上げいただいたお客様には、保証書をお付けしています。一翅ずつ仕立てた作品が、お手元で永く時を刻み続けるように——

電池交換や修理のご相談は、保証書とともにいつでもお寄せください。メンテナンスサービスの詳細は、修理/メンテナンス依頼にてご案内しております。

蝶を用いることについて

皆様から『作品を作るために生きた蝶を捕まえているのではないか?』というご意見を頂くことがあります。

私たちが扱う蝶は、ワシントン条約の規定に則り、適法に流通する個体のみを用いています。
採集を目的とせず、標本として役目を終えた個体や、傷や欠けにより標本にならなかった個体を譲り受け、再び形を与えています。

殿方へ

当ショップの作品は、女性向けの印象で語られることが多くございますが、すでに殿方にもお持ちいただける一品が静かに息づいています。


モルフォの青を手首に纏うメンズ用モルフォブレスレット、首元にそっと翅の余韻を残すループタイ「翅の痕跡」(男女兼用)。いずれも一点ずつ手仕上げで、男女の別なく作品としての強度を持たせています。

ご覧いただきやすいよう、「男女兼用」の手がかりで辿れる導線整備を進めております。

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